飼い主に討たれ首を祀られた大蛇
どんな伝承か
ある人が山から小さな蛇を捕ってきて飼っていると、蛇はみるみる大きくなり、村の者が怖がった。飼い主は捕ってきた山へ蛇を返したが、人に育てられた蛇は山で生きるすべを知らず、腹をすかせては里へ下りて畑の作物を荒らした。村をあげて蛇狩りをし、退治することに決まると、飼い主は哀れに思い、自分で山へ行って蛇を呼び出し、わけを話して殺されてくれと頼んだ。蛇は首をもたげて差し出し、飼い主はその蛇を手にかけた。首は持ち帰って土に埋め、神仏として祀り、胴は川へ流したという。蛇を殺したとき首だけを串に刺して残しておく習いも、この話とともに語られる。
原典より
そうしたところが、人間に育たれていた蛇だから、野獣にけぇることができなくて、腹が減ったりすれば、里へ下ってきて農家の作物を荒したりいろいろしたりして悪さだ。—— 向原の民俗 上――昔話・伝説・怪異(民俗調査報告 第9号・第10号・民俗調査報告) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
向原の民俗 上――昔話・伝説・怪異(民俗調査報告 第9号・第10号・民俗調査報告)
『向原の民俗 上――昔話・伝説・怪異』は、民俗調査報告の第九号・第十号にあたる向原の民俗誌の上巻から、「IX 口承文芸」の章を収めたものである。昭和五十六年から五十七年にかけて向原の話者から聞き書きした昔話十一話、伝説二十四話、天狗や狐、河童、ヒトダマをめぐる世間話二十七話のほか、富士山や天気の諺と暮らしの方言を収める。昔話・伝説・世間話の節ごとに題名・分類・話者の生年・採集日の表を置き、話は土地の言葉のまま書き起こして話者名を添える。