絶壁の一本道で背後から呼ぶ声
どんな伝承か
夫が海尻の豆腐屋の寄り合いに出たまま、翌日の午後になっても帰らない。心配した妻が海尻の姉に問い合わせると、前夜六時ごろには発ったという。九時半ごろ、夫は下駄を片方ぶら下げ、鉢巻きをして裾をからげ、汗みずくで戻ってきた。話によれば、下のみやまの大曲がり、清水の落ちるあたりで、背後から二、三度おーいと呼ばれた。道端の石に腰かけて煙草を吸っているとまた呼ぶので、追い剥ぎかと身構えたが、何も起こらなかった。横へ逸れようのない絶壁の一本道を、二十分の道のりに三時間半もかけていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
南佐久郡誌 民俗編――伝説・世間話(南佐久郡(編)・南佐久郡誌・自治体史(民俗))
『南佐久郡誌 民俗編』第十三章所収の伝説・世間話。長野県南佐久郡に伝わる口承を採録する。