いくら射っても倒れぬ白服の兵
どんな伝承か
柳田国男と佐々木喜善がまとめた『遠野物語拾遺』には、日露戦争のころの白い軍服にまつわる話が二つ収められている。一つは、仮死状態に陥った兵の魂が白い軍服のまま故郷の遠野へ飛び、留守宅の母もその姿を見たというもの。もう一つが、白い服を着た日本兵は、敵がどれだけ銃弾を浴びせても倒れなかったという話である。川村邦光は、いずれの話でも白い軍服が死者や亡霊を思わせる装いとして働いており、とりわけ撃たれても倒れぬ兵の話には、恐れというより畏れに近い心情がひそんでいると読み解いている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幻視する近代空間 ―迷信・病気・座敷牢、あるいは歴史の記憶(川村邦光・現代(近代史研究))
民俗学者・川村邦光が、近代日本が在来の習俗や憑きもの信仰をいかに〈迷信〉として再編し、狐憑きを脳病・神経病・憑依妄想へ病理化したかを、具体的事件・事例に即して論じた近代史。