素麺食ひ
どんな伝承か
大正四、五年の頃、三好郡三縄村字川崎の岡本某という二十六歳の女が狸に憑かれ、長く患っていた。験者を招いて厳しく祈禱させると、狸はついに白状し、この家で素麺を食べているのを見て欲しくなり取り憑いた、素麺を一貫匁ほど煮て食わせれば去ぬと言った。その通りに煮てやると、皆は食わなかったが女は大方を平らげてしまった。翌日、近隣の小川某が腹を膨らませてよろめく狸を見つけて撲り殺し、皮を剥ぐついでに腹を裂くと、中から沢山の素麺が出てきた。まもなく女の病は嘘のように治ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波の狸の話(不明(徳島県史蹟名勝天然記念物調査委員と本文中に自署。著者名は本テキストに明記なし)・大正末〜昭和初期(本文に「煙草専売法施行から二十四五年」「大正十年」等の記述あり、収録は昭和初年頃と推定))
徳島県(阿波)に伝わる狸譚を集成した郷土怪異資料。