女花子
どんな伝承か
正月十五日の夜半近く、改造社の社員某は、大阪郊外の岡本に住む谷崎潤一郎の家から帰る途中であった。爪先下がりの道を下っていくと、向こうから人の来る気配がする。近づくにつれ黒い影が見え、二十間ほどになったとき、某は立ちすくんだ。髪を振り乱した女が、宙に浮いたようにして音もなく進んで来るのである。某は血が頭にのぼった。ふと左を見ると、月に照らされてたくさんの石碑が並んでいた。墓地かと思う間に、怪しい物は墓地の方へ折れて入口から入って行った。後に谷崎にその話をすると、谷崎は「あれは女花子だよ。児があって、それが死んじまったので気が変になっているのだ。彼処で寝ているのだよ」と言った。
原典より
* 窓に腰をかけた女 (170)* 結いたての島田髷 (171)* 書物を返しに来る (173)* 華表の額の怪 (176)* 天井裏の妖婆 (178)* 老婆の幽霊 (179)* 東京の納豆…—— 日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫版・決定版・昭和13年編纂(1938年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談実話(田中貢太郎・河出文庫版・決定版・昭和13年編纂(1938年))
日本怪談実話(田中貢太郎)/幽霊と怪光の実話/怨霊と祟り・因果/死の前兆と怪音/各地の怪異実話