髪を抜き取られて尼になった老婆
どんな伝承か
駕籠に頭を突き入れて突き戻された老婆の額に門跡の手がかかったのを遠くの者が見て、特別に手を触れられたのだと騒ぎ出した。人々は老婆の周りに集まり、手の当たったあたりを我も我もと触ろうとする。身をかわそうとするうちに囲みは厚くなり、一人の若い男が老婆の髪を二、三本つまんで抜き取った。次いで老人が一つまみ抜き、やがて皆が争って指をかけた。髷は崩れ、老婆は助けてくれと手を振って悶えたが、信心に夢中の耳には届かない。老婆が気を失って人波に揉まれ、髪が一本もなくなって尼のような頭になると、人々は老婆を捨て、行列を追って雪崩れていった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ・明治末~大正期(推定))