陣太鼓と炎の夢を見た監物
どんな伝承か
斗賀野の方から山坂を越えて来た山内監物の一行は、路の右手に見えた寺で一服した。清龍寺の末寺、積善寺である。監物は丘の裾の薬師堂に据えられた脇立の不動が運慶か湛慶の作だと住職に聞くと、「門口が淋しいから、これを据えるといいだろう」と言い、面倒が起きれば俺が盗んだと言えばいいと押し切って、臣の甚六に木像を持たせた。その夜、一行は戸波の村役人の家に泊まる。酔った監物の耳に陣太鼓の遠音が聞こえ、床の間の不動の像を紅蓮の炎が包んで見えた。翌朝、臣たちは全身から火を噴く男や飛んでくる火の団の夢を口々に語り、監物自身も炎を上げる男に一晩中追われる夢を見ていた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の怪談(二)(田中貢太郎・日本の怪談シリーズ・明治末~大正期(推定))