船尾の谷でぼた餅を食べた神かくし
どんな伝承か
八木原の人が神かくしに遭って行方知れずとなり、村中が総出で探しても見つからなかった。四十日ほど過ぎたころ、当人はひとりで戻り、船尾の谷で湯気の立つぼた餅を毎日食べていたと語った。そこは千段狩りと呼ぶ村の秣場で、馬を引いて草刈りに通う原である。実際には馬糞を口にしながらさまよっていたのだろうと村では噂した。ほかにトキという人が十日ほど姿を消し、蓑を着て浅間山すなわち水沢山にいるところを見つけられ、中子稲荷に隠されて姿を消した老女もあったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
渋川市誌 民俗編(市史編纂シリーズ・1980年代-1990年代推定)
本書は群馬県渋川市の民俗編として、地域に根ざした信仰体系と死生観を記録した資料である。民間信仰と俗信を既成宗教以前の下部構造と位置付けた上で、死の前兆(人魂現象、予知)、生死の境での異世界体験、死後の蘇生・生き返り、転生輪廻などの多様な事例を収集している。特に行幸田地区では生き返り事例が集中し、地域固有の信仰と関連する可能性が高い。