五百巻では足りなかった稲荷の祈禱
どんな伝承か
大正十三年ごろのこと。家に病人が絶えないので、母親は中村の実家の近くにいた祈禱師の御岳長さんに頼み、稲荷様の春祈禱をしてもらった。すると、半田の家の稲荷の境内には代々伐ってはならぬ大杉があったのに、それを伐ったから病人が出るのだ、というお告げが下りた。祈禱を受けても不運は続いたため、今度は笠間稲荷に見てもらう。先日の祈禱は五百巻だったが、本来は千巻でなければならなかったと言われ、あらためて千巻の祈禱をしてもらったところ、それきり何事も起こらなくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
渋川市誌 民俗編(市史編纂シリーズ・1980年代-1990年代推定)
本書は群馬県渋川市の民俗編として、地域に根ざした信仰体系と死生観を記録した資料である。民間信仰と俗信を既成宗教以前の下部構造と位置付けた上で、死の前兆(人魂現象、予知)、生死の境での異世界体験、死後の蘇生・生き返り、転生輪廻などの多様な事例を収集している。特に行幸田地区では生き返り事例が集中し、地域固有の信仰と関連する可能性が高い。