霧の峠で二度行き違った白足袋の女
どんな伝承か
学習院長だった乃木大将が、生徒に請われて語った話である。幽霊は今でこそ怖くないが、少年のころは臆病だった。十五、六の、まだ長門の萩にいたころ、急な用で七、八里離れた所へ使いに出され、その帰りに山道をたどって峠にかかったのは丑満どきだった。濃い霧が下りて足元も見えず、探り足で進むと、五、六尺先に蛇の目傘をさし白足袋をはいた女がぬっと現れた。傘で上半身を隠したまま行き違うと、ふっと消えた。恐ろしくなって足を速めると、また同じように現れ、行き違ってまた消えた。あれが何だったのか今も分からないという。
原典より
* 客に縋る娼妓の幽靈* 火を起し湯を沸す幽靈* 行司の見た幽靈* 新俳優の見た幽靈* 貞女の幽霊と勝四郎* 三人見た白い手の幽靈* 他女の體に宿る幽靈* 伯母の幽霊が暇乞* 幽霊の髪…—— 幽霊は語る(梶天真・幽霊研究・大正〜昭和(戦前)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽霊は語る(梶天真・幽霊研究・大正〜昭和(戦前))