池から棚杖を呼ぶ声
どんな伝承か
昭和十六年、のちに防衛庁が置かれる場所にあった兵営でのこと。夜更けになると、敷地の池から「さくじょう、さくじょう」と呼ぶ声が聞こえてきたという。棚杖は小銃に付属する細長い棒で、銃身の内部を掃除するのに使い、菊の御紋が刻まれていた。天皇から賜った兵器を紛失したことを苦にした気の弱い兵隊が、夜中にその池へ身を投げて命を絶ち、それ以来この声がするようになったと語り伝えられた。
原典より
弘前の軍隊で、背嚢に外套こうくっつけるわけですが、私のように無器用なのは出来ないんで、いつもやってもらった人なんですが、「兵隊ってつまらねえ。—— 現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 軍隊(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 軍隊』を小話単位で全712話収録。徴兵・新兵・上官・戦地・戦争の残虐・敗戦・収容所・軍隊の怪談など、軍隊と戦争にまつわる兵士たちの現代民話を全国(一部は戦地・海外)から採集し話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明189話・市区町村判明76話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。