風呂を好んだ亡母の三度の来訪
どんな伝承か
昭和五十七年の夏、府中市に住む知人の話という。母を亡くして四十九日の法要を営んだ夜、着物姿の母が玄関に立った。驚いて夫や友人を呼ぶと、亡霊は玄関脇の風呂場へ入って消えた。墓石を彫る友人が死の様子を尋ねるので話すと、母は癌を患い、好きだった入浴も食事も病院で制限され、それを苦にしていたことが思い当たった。必ずまた来るから湯を沸かし膳を整えて待てという友人の勧めに従い、十二時十分前に現れる母を迎えた。母は同じ姿で三度現れ、法要を済ませてからは出なくなったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。