落ちた写真の額と祖父の訃報
どんな伝承か
昭和十年の初秋のことだったと思う。兄とはよく取っ組み合ってふざけていたが、その日はおとなしくしていた。ところが夕方、突然、天皇と皇后が並んで写った写真の額が落ち、ガラスが割れた。口やかましい父だったので、どれほど叱られるかと身を縮めていたのに、父はいやな顔をしたきり黙って何も言わなかった。その夜八時ごろ、チチシス、と電報が届いた。祖父が死んだのである。あのとき額が落ちたのは、やはり死の知らせだったのだと思った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。