明治の末の話
どんな伝承か
南佐久郡臼田町の話。明治の末、月の美しい八月のこと。我が家では母と隣のおそのさんが相変わらず仲よく茶を飲み、私や妹たちはそれぞれ勉強していた。その時突然、トントン、またトントンと戸を叩く音がした。音はかなりはっきりしていて皆の耳に届いた。当時は人の家を訪ねる時、夜なら「こんばんは」と声をかけるのが普通であった。障子と戸を開けて音のしたあたりを見たが、人影はおろか猫の子一匹いない。庭をあちこち歩いてみても何もなかった。その深夜、母の実家から、母の弟の妻フミの死を知らせる電報が届いた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。