百日の荒行の途中で出た川
どんな伝承か
昭和三十六年の正月ごろ、法華経寺で百日の荒行に入っていたときのこと。朝三時から十時半までのあいだに一日七回も水をかぶり、身につけるのは腹巻きと単衣一枚だけ。食事も粥と飯の中間のような柔らかいものが一杯である。三度目に倒れたとき、川に出た。美しい所で、なんとも言えない音楽が鳴っている。あれが本当の極楽だろう、行ってみたいと思ったが、川には入らなかった。二日間意識不明で面会謝絶となり、病院の事務長をしていた兄は、死ぬまでは家に知らせるなと言っていたという。
原典より
私の叔母が先日(昭和五十七年・註/松谷)亡くなりまして、入院の初め頃は、死んだ者の顔が並んで崖の下に居て「来るな、来るな」と言っていて、自分は崖の上で必死につかまっていたと、夢の中の話をしていました。—— 現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。