独房暮らしを語って客を降ろす
どんな伝承か
池袋や新宿では暴力団らしい客をよく乗せる。幹部風の者は言葉遣いも丁寧でチップも置いていくが、下っ端は威張って始末が悪い。刑務所を出たばかりらしい男が仲間と三人で大久保から乗り、区役所通りに入って渋滞になるといら立ち、狭い道なのに追い越せとわめいた。運転手が振り返り、終戦のとき館山で海軍航空隊の隊長をしていて千葉刑務所の独房に半年入れられたと低い声で凄むと、男は先輩でしたかと恐れ入り、三人ともすぐに降りてしまった。
原典より
自分の所から二十里ほどの後藤野の話。—— 現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成)
松谷みよ子『現代民話考 ― 偽汽車』を小話単位で全525話収録。汽車・船・自動車などの乗り物にまつわる現代の民話・怪談を全国から採集。狐狸が汽車に化ける偽汽車、船幽霊、タクシーに乗る幽霊などを地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明359話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。