古峰ヶ原の参籠で見た天狗の角力
どんな伝承か
明治三十年ごろ、岩代の檜枝岐村で屋根葺きを生業とする定助が、友人と連れ立って古峰ヶ原の神祠へ参った。二、三時間の籠りを終えて寝間に下がると、広前のほうから人の組み合うような物音が聞こえてくる。障子の穴に目を当てると、背の高い見知らぬ者が七、八人、定助の好きな角力を取っていた。夢中で一時間ほども覗き込み、勝負が果ててからようやく眠りに落ちる。翌朝は寝過ごし、日光へ向かう山道で語り合ううち、連れが見ていたのは角力ではなく撃剣だったと分かった。二人はそれぞれの好むものを天狗が馳走に演じてみせたのだと得心したという。
原典より
日光の東南山續きの古峰ヶ原の神祠は、古来行者輩の参籠修行の霊場で、現代にも天狗に關する事実があつて有名である。—— 幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
幽冥界研究資料 第二巻 靈怪談淵(岡田蒼溟・幽冥界研究・怪談・大正〜昭和(戦前))