踊子を縁から蹴落す話
どんな伝承か
退屈した爺さんが火桶を抱いて表の間に坐っていると、慌ただしい足音がして、縁側へ飛び上がった者が「ええぢゃないか」と踊り出した。若い頃に草相撲を取ったこともある気性の爺さんは、障子を開けるが早いか「これ、不都合な」と蹴飛ばし、踊っていた者は二三度転がって縁から下に落ちた。ところが少しも痛そうな顔をせず、背戸へ回って板の間にあった丁稚の食いさしの塩鰯を取り上げ、むしゃむしゃ食いながらまた踊り出したので、爺さんも丁稚も開いた口がふさがらなかったという。
原典より
爺さんは少し退屈しかけたので、孫でもつれて氏神さんへお参りがてら遊びに行かうかと思つたが、それも億劫だつたから、やはり火桶を抱いたまま表の間で坐つてゐた。—— 阿波えゝぢやないか(山口吉一・民俗・幕末世相史・昭和(対象は幕末)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波えゝぢやないか(山口吉一・民俗・幕末世相史・昭和(対象は幕末))
概観篇では御降り(御札降り)に関する騒擾、伊勢神宮への御蔭参り・抜参りを慶安・宝永・明和・文政・慶應と時代別にたどり、慶應のええじゃないか、阿波のええじゃないかへと展開。幕末阿波(徳島)の御札降り・群集乱舞・世直し的民衆運動を、各事例の冒頭に【日付】【場所】【人物】【状況】マーカー付きで網羅した民俗・世相史。