底なし籠で踊る爺さんの話
どんな伝承か
ユーモアに富んだ平さんと六さんは、踊りの接待に駕籠でもと旧家から古い駕籠を借り出し、人通りの多い三つ辻に出て待っていた。駕籠に乗れ、お接待の駕籠だと呼ばわっても、年頃の娘は恥ずかしがって逃げる。そこへ頭の光る禿の爺さんが扇を押し開いて踊りながら来て、駕籠に目をつけるなり、きりりと鯱張って「其處の者、駕籠を持て」と言った。二人は調子が板についているので思わず駕籠を舁き寄せ、爺さんは一国の城主のような恰好で乗り込んだ。ところがその駕籠は底が抜けていた。爺さんは少しも騒がず、中から扇を差し出して踊り踊り行ったという。
原典より
ユウモアとかいふものに富んだ平さんと六さんは、踊の攝待に駕籠でもとさる舊家から古つぽい駕籠を借り出して、通りのしぎよい三つ合に出て待つてゐた。—— 阿波えゝぢやないか(山口吉一・民俗・幕末世相史・昭和(対象は幕末)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波えゝぢやないか(山口吉一・民俗・幕末世相史・昭和(対象は幕末))
概観篇では御降り(御札降り)に関する騒擾、伊勢神宮への御蔭参り・抜参りを慶安・宝永・明和・文政・慶應と時代別にたどり、慶應のええじゃないか、阿波のええじゃないかへと展開。幕末阿波(徳島)の御札降り・群集乱舞・世直し的民衆運動を、各事例の冒頭に【日付】【場所】【人物】【状況】マーカー付きで網羅した民俗・世相史。