手に映ったサムライの顔の話
どんな伝承か
昭和五十二年から五十四年頃、小田原の南町に仲間が金を出し合って借りた木造二階建ての家があり、彼らはそれをハウスと呼んでいた。海岸まで一分の場所で、夜には海の音が聞こえた。二階の和室では夜半に白い服の人影が歩くのを何人もが見ていた。ある晩コックリさんをすると、拾えたのは「サムライ」「シンダ」「クビ」という言葉だけだった。やがて床の間に髪の乱れた侍らしい男の顔が現れ、滝村秀一が這い寄って手で触れると顔は消え、彼の左手の甲に小さくなって現れた。顔は数分で見えなくなり、以後彼は菜食になり髪を後ろで束ねたという。
原典より
* 何度も雪の中に埋めた死体の話* 夜になるとやってくる小人の話* ちょうちんが割れた話* 走ってゆく足跡の話* おいでおいでの手と人形の話* おとうさんの“おい、こら”の話* 続・何度も雪の中に埋めた死体の話* 二階の…—— 奇譚草子(夢枕獏・1980年代~1990年代初期(推定)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
奇譚草子(夢枕獏・1980年代~1990年代初期(推定))
夢枕獏による短編怪談集『奇譚草子』は、著者が友人や知人から聞いた伝聞話を中心とした怪談を集めた作品。生霊から幽霊、見えない霊的存在まで、多様な心霊現象を描く。登場する舞台は東京・神奈川・長野・岩手など全国各地で、都市の住宅から北八ヶ岳などの山岳地帯まで広がっている。金縛り、ポルターガイスト、予知能力、夢遊病など複数の超常現象パターンが繰り返し登場。