私が七歳の梅雨の頃のことです
どんな伝承か
語り手が七歳の梅雨の頃のことである。畦道の小川や草むらでは蛍が光るのに、その夜はさっぱりいない。土手に腰かけて家の方を見ていると、母が見舞いに行っている西の家の屋根の上から、風船玉より少し大きい火のかたまりがすうっと真っ直ぐに上った。火の玉はゆらゆらと波打ちながらこちらへ来る。男の子たちは箒で払い棒で突いたが、火の玉はするりと逃げ回り、石が当たったのか空高く舞い上がって元来た方へ戻り、西の家の屋根からすうっと中へ入ってしまった。ちょうどその頃、眠り込んでいた西の家の桃代が動き出し、「あーあ、びっくりした。子どもたちにいじめられてひどい目にあった」と言ったそうである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂(松谷みよ子・現代民話考・昭和50年代~60年代(推定))
松谷みよ子『現代民話考 4 夢の知らせ・火の玉・ぬけ出した魂』を小話単位で全513話収録。夢のお告げ・予知夢、火の玉、ぬけ出した魂(離魂)など、心と生死の境にまつわる現代の民話を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明482話・市区町村判明386話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。