赤ん坊を避けて弱った黒猫クー
どんな伝承か
昭和三三年、葛飾区金町でのこと。長女の出産をひかえた母が、猫は赤ん坊の顔に乗って殺してしまうと言い暮らしていた。飼い猫はそれを聞き取ったのか餌を口にしなくなり、掌にためた牛乳をようやく舐めるほど弱った。赤ん坊が生まれると、猫はそれまで寝起きしていた部屋へ二度と入らず、別室に赤ん坊がいれば遠回りして避けた。子守唄が聞こえると戸の外でじっと耳を澄ませている。哀れになって抱きあげ赤ん坊のそばに座らせたところ、猫は震えあがり、腰を抜かして歩けなくなった。産後二十一日で母が帰ると猫は人にもらわれ、まもなく死んだ。クーという名の黒猫だった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代推定)
松谷みよ子『現代民話考 10 狼・山犬、猫』を小話単位で全541話収録。狼・山犬・猫にまつわる現代の民話・怪異譚(送り狼・化け猫など)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明535話・市区町村判明490話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。