八軒小路の虎毛猫が語った浄瑠璃
どんな伝承か
登米郡米山町の米岡、この地が遠田郡西野村米岡宿と呼ばれていたころの話である。八軒小路のある家に、年老いた大きな虎毛の猫が飼われていた。近くの家に旅芸人が来てお国浄瑠璃があった晩、家の者は耳の遠い老婆を留守番に残して出かけた。夜も更けたころ、縁の下から虎毛猫が出てきて喉を鳴らし、隣で聞いてきた浄瑠璃を語って聞かせようという。薄気味悪くはあったが退屈なので頼むと、猫は他人に告げたら喰い殺すぞと念を押し、腹を三味線がわりに掻き鳴らして義経千本桜の一節を語った。翌朝、老婆がうっかり、ゆうべ猫が、と口にすると、猫は喉もとへ飛びかかり、騒ぐ人々をよそに門口のサイカチの古木へ駆け上って、小牛ほどの姿になり黒い風に乗って天へ昇ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第2巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第2巻』所収の「文化叙事伝説」64話(岩手・宮城・秋田)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。