正月十五日に廁へ供える燈明
どんな伝承か
便所には神がいるという言い伝えは各地にあり、男女の人形や紙雛を祀ったり、正月に餅を供えたりする土地もある。宮城県の迫町では、正月十五日の夜に、その年を病まずに過ごせるようにと廁へ燈明を供える習わしがあった。昼田源四郎がこれを引くのは、陸奥守山領で安永五年に、麻疹の腹痛を鎮めるため雪隠に灯をともす呪いが行われ、人目につかぬ場所で火を焚けば大火を招くとして藩から禁じられた記録があるからである。廁神の信仰は、こうして東北から南島まで広く分布していた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
疫病と狐憑き-近世庶民の医療事情(昼田源四郎・昭和中期(推定))
本書は江戸時代の陸奥奥州守山藩領における『御用留帳』を史料とした、近世農村の医療事情と心霊現象の研究である。狐憑きや物付きなどの精神疾患が、祈禱や指籠入れ(座敷牢)によって治療された実例を14件詳述する。天明・天保の飢饉や流行疫病(疱瘡、麻疹、コレラ等)への対応と並行して、乱心者の社会的処遇、責任能力の鑑別問題、欠落(逃亡)との区別が論じられている。