昭和五一年、畑で聞いた話
どんな伝承か
武という元気者は、木出しで木馬に足を怪我したり、消防の出初式で酔って炬燵で大火傷をしたりしても達者で、近頃は製材所へ通っていた。うっすら雪の降った寒い朝、皆で焚火にあたり、さあやろうと言って外へ出るなり脳溢血で倒れ、二、三日して死んだ。しばらくして、あれは猫の祟りだろうという噂が立った。前の晩、武の家に猫が入って来たのを、武は何か気に入らぬことがあったとみえ、引っ掴んで外へ出て力いっぱい投げた。猫は道路を越えたはるか向こうの柿の木に体をぶつけ、幹を爪で引っ掻きながら落ち、血を吐いて死んだ。女房が幹の血を落として死骸を始末したが爪痕は残り、武が倒れたのはその日であった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考・1970年代~1980年代推定)
松谷みよ子『現代民話考 10 狼・山犬、猫』を小話単位で全541話収録。狼・山犬・猫にまつわる現代の民話・怪異譚(送り狼・化け猫など)を全国から採集し収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明535話・市区町村判明490話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。