眼鼻を描いた客招きの杓子
どんな伝承か
遊女屋が客を呼ぶまじないに杓子を使う風は各地にあった。紀州田辺では客の少ない夜、人知れず杓子を懐にして四辻へ行き、四方を招けば客が来ると信じられていた。京都でも杓子で三度招けば待人が来るといい、奈良の木辻では十能を使って街頭で客を誘う例が見られている。東京の吉原の例はいっそう露骨で、四辻へ持って行って四方を招く杓子には眼と鼻が描かれ、術者はそれで前を三遍叩いたという。大文字楼には黒塗りで内側を朱に塗った古い杓子が錦の布に包まれ、霊体として祀られていたとも伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第4巻』を全822話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。