軒先に打ちつけた「メ」だらけの杓子
どんな伝承か
関東から福島県にかけて百日咳をクツメキと呼び、杓子にその字を書いて打ちつけるまじないがあった。今野圓輔は敗戦後しばらく杉並区の高円寺でアパート暮らしをしていたころ、通勤の途中で似たものを毎日眺めていたという。中野駅から坂を登りきった突き当たりの店、その軒先に、杓子いっぱいに「メ」という片仮名をびっしり書いたものが打ちつけてあった。おそらく眼病を治すためのまじないだったに違いない、と書き留めている。杓子はもともと主婦の座を示す象徴でもあった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代の迷信(今野圓輔・今野圓輔・民俗学・昭和(高度成長期))
民俗学者・今野圓輔が高度成長期の日本に残る迷信を社会派ルポとして告発・分析した一冊。序章では、静岡県掛川市で異性双生児を畜生腹と恥じた母親の母子心中事件、青森県三本木市でキツネ落としと称して女を火あぶりにした殺人事件など、迷信が現代も殺人・心中を生む『黒い習俗』を突きつける。