伊那下神社拝殿の女を刺す掛額
どんな伝承か
明治四十三年五月二十一日、柳田国男は松崎の伊那下神社に参った。拝殿に掛かる額の中に、古くて判然としない絵が一枚あった。北斎風の画で、男が刀を抜いて若い女を刺そうとしており、そのそばではもう一人の女が胸をはだけ、ここを突けと差し出している場面である。いったい何を描いたものか柳田には分からなかったが、なぜか妙に心に残ったと日記に書いている。
原典より
傍に今一人の女、胸を開きこゝを突けとさし付けたる所なり。—— 定本柳田国男集 第3巻(柳田国男・定本柳田国男集) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第3巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第3巻』は、柳田国男の紀行・日記・随筆を集めた著作集の一巻である。相模・武蔵の村々を歩いた「水曜手帖」、昭和二十三年八月の自序を持つ「北国紀行」、明治四十三年の「五十年前の伊豆日記」、国際聯盟の委任統治委員会に勤めた大正十一年の「瑞西日記」と「ジュネーブの思ひ出 その他」を収める。後半の「菅江真澄」は昭和十七年二月の序を付け、真澄の著述と旅の跡を年を追ってたどり、写真解説を添える。