秋生村の出稼ぎ娘が病死
どんな伝承か
越前の灰帽子峠の口にある秋生などは、男は鉱山の出稼ぎが本業で、女ばかり多い淋しそうな村である。それをどうして知ったか、毎年大阪の工場から一人につき何円かの歩を貰う募集員が来たり、先に出た娘に手紙を書かせたりして、年頃の者を沢山に連れて行く。大阪からは中形の浴衣で写した写真などが来るのに、山村の生活は荒くて苦しい。折々日向の障子を一枚あけて、色の蒼白い者が坐って旅人を見ているのが著しく目に立つ。この村では若い婦人が死んでいけません、三人や五人ではないのですと、駐在の警吏も惜しそうに語った。一人残らず何かの繊維工業に働いていた者だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第2巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第2巻』を全331話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。