明和の大津浪、宮良の民を絶やす
どんな伝承か
宮良の里はすでに片田舎となって、南に漫々たる蒼波に面している。かつては蝦夷の日高の沙留と同じく、ここに風流のカワラが居を占めて幾多の宮童の歌を養ったものらしいが、明和の大津浪に故の民の種は尽きて、今は幽かな口碑も遺っていない。村の西の荒野を、宮良川が静かにひる木林の蔭を流れている。干瀬の大きな石を伐って来て川に架けた宮良橋は、島の一つの名所である。この村は明和八年の大海嘯の後に、ことごとく小浜の島から移された民であるという。昔の大津浪の日の早天には、やや強い地震があって潮は遠く退き去り、五彩の海底が白日の下に露れたと伝えられる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第1巻(柳田国男・定本柳田国男集)
柳田国男編『定本柳田国男集 第1巻』を全451話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。