下条婆あと鐘平
どんな伝承か
昔、藤井町下条に一人の老婆がいた。病気のためか額に角のようなものが生えたので、村の人たちが誰言うともなく「鬼になった」「鬼婆あ」と言いふらす。老婆は家に居たたまれず、どこかで往生しようと固く心に誓って家出した。方々歩き回っても死に場所は見当たらず、鷹の田まで来ると大きな池があったので飛び込んだが、案外浅くて死ねなかった。仕方なく池からはい出し、念仏を唱え所持の鐘をつきながら山路をたどり、鳥井峠を過ぎ、山を越え谷を渡って甘利山の椹池へ身を躍らせ、不帰の客となったという。鐘つき平は鷹の田から鳥井峠へ行く道沿いに残る地名である。
原典より
昔藤井町下条に一人の老婆があった。—— 韮崎市の民話伝説(昭和四十二年(1967)刊) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
韮崎市の民話伝説(昭和四十二年(1967)刊)
山梨県韮崎市(穴山・穂坂・清哲・神山・大草・藤井・竜岡・中田・円野ほか各町)に伝わる伝説・民話を、木/石/水/塚/坂・峠/山/谷・沢/屋敷跡・城址/祠堂/その他 の各部門に分類して集成する。武田信玄・勝頼ら甲斐武田氏や新府城にまつわる伝承、日本武尊・源為朝・弘法大師の旧跡、御神木や霊石・霊池の怪異、稲荷・地蔵・観音の霊験、狐狸むじな・河童・鬼の昔話など、韮崎の地に根ざした怪異・霊験・由来譚を地区つきで網羅する。