善光寺の棟木
どんな伝承か
永禄年中、武田信玄が善光寺の本堂を建てるにあたり、奥行二十五間の棟木に足る良材が甲信両国に見当たらなかった。ただ中郡筋高畑村に数百年を経てなお朽ちぬ古柳の大木があり、これを伐ることに決まった。その頃、隣里遠光寺の農家の娘お琴のもとへ、夜ごと通う男があった。ある夜、男は泣いて今宵限りの別れを告げ、自分は高畑村の古柳の精で、明日棟木のために千年の命を失うと明かした。そして、伐られた木は千人の力でも動くまいが、その時そなたが音頭を取ってくれれば動くと言い残して消えた。翌日、動かぬ柳に娘が今様を唄うと木はゆらりと動き、難なく板垣の里へ着いた。信玄はこの話を聞き、娘に手厚い褒美を賜ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第5巻』所収の「文化叙事伝説」全104話(千葉・山梨・神奈川・埼玉・東京=関東甲信)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。