建長寺の狸
どんな伝承か
昔、鎌倉の建長寺の境内に古狸が住んでいた。代々の住職を食い殺しては、そ知らぬ顔で住持に化け、常に鎌倉五山の首位になりすましていたという。ある時、末寺を巡遊することになり、日数を重ねて当山=常光寺までやって来た。来遊後まもなく庭先の老松を見て、この木は近々枯れるから記念に描いて進ぜようといい、杉戸四本を用意させ、いざ書く段になると一切人目を避けて筆を振るった。果たして数年後、その松は枯死した。長く滞在するうち、客僧は食事の作法が乱れがちで僧たちに風評が立った。まもなく寺を発ち、台ヶ原の本陣で輿から降りる際に番犬にかみつかれ、数日後、里垣村でついに本性を現したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第5巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第5巻』所収の「文化叙事伝説」全104話(千葉・山梨・神奈川・埼玉・東京=関東甲信)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。