岩渕長者の子
どんな伝承か
因幡国岩美郡浦富村に香林寺という寺がある。今から六百年ばかり前、一人の旅僧が境内を通ると、墓地の下から赤児の泣き声が聞こえた。村人に尋ねると、毎夜、どこの誰とも分からぬ若い婦人が飴を買いに来て、後をつけても見失うという。旅僧が妊娠したまま死んだ者はないかと問うと、岩渕長者の娘が臨月に産をせずに死んだというので、墓を発掘すると果たして男の子が生まれていた。僧はこの児を連れ去り、十四歳で能登国総持寺にやって禅門の修業をさせ、名を通幻と改めさせた。通幻は後に高僧となり、明徳二年五月五日に七十歳で示寂した。元禄十一年、その生まれた地に碑が立てられ、土葬神といって安産の仏として崇められたという。
原典より
<高木——「頭白上人」 柳田——「赤子塚」「竜泉寺」>因幡国岩美郡浦富村の香林寺というのがある。—— 日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第11巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第11巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全56話(鳥取・島根=山陰)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。