河太郎の証文
どんな伝承か
岡村に関という家がある。その先祖は赤松氏の末孫光氏という人である。家の近くを夢前川が流れ、昔はこの川原に牛や馬を放し飼いにしていた。川原の南、岩山を背にしてとても深い淵があり「穴淵」といった。穴淵には大きなガタロが住み、牛や馬を淵に引き込んで食べたことが何度もあった。ある日、関家の馬が川原で草を食っていると、首の綱が何かの拍子に水に浸かり、ガタロが綱を引いた。命がけの綱引きの末、ガタロの甲羅が水の上に出ると力が失せ、馬はガタロを縛り上げて家まで引いて帰った。人々は槍で突き殺そうとしたが、ガタロは心から詫び、情け深い主人は許してやった。ガタロは礼にと、乳の出ない母親に与えれば乳が出るという薬の調合を教えて淵へ帰った。以後、穴淵でガタロを見た者もなく、牛馬を取られることもなくなった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第8巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房)・現代(編纂)/伝承(口承))
『日本伝説大系 第8巻』所収の「文化叙事伝説」および「自然説明伝説」全133話(滋賀・京都・兵庫=近畿)を、各話の伝承地(市町村〜字レベル)とともに収める。