千石野と孝行の豆の木
どんな伝承か
昔、吹上の在所に、幼くして母を亡くした孝行な娘がいた。後妻に来た継母は、自分の娘が生まれると継子をますます憎み、二人に千石原で豆を蒔いてくるよう言いつけた。継子には炒った豆を、実の子には生の豆を持たせ、芽が出ないのを継子の怠けのせいにするつもりだった。途中、炒り豆の香りを欲しがった実の子に一握りの炒り豆を渡して生の豆一粒と取り替えた継子は、その一粒を神仏に祈りながら蒔いた。豆は秋には天に届くほどの大木に育ち、莢をたくさん実らせた。村人も継母の企みに気づき、孝行な娘の豆の木だ、神仏のお慈悲だと語り合ったという。
原典より
日頃遊んでばかりいた本子は急に畑を耕すことが出来ず、畑を打たずに豆を蒔き、継子は一粒の豆を大事にして、神や仏にこの一粒の豆に千石も豆が実るようにお願して蒔いて来たが、それでも唯だ蒔いた豆も少しは芽を出したが、…—— 河内村史 下巻(民俗編)――白山麓の伝説(河内村(編)・河内村史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
河内村史 下巻(民俗編)――白山麓の伝説(河内村(編)・河内村史)
『河内村史 下巻(民俗編)――白山麓の伝説』は、白山麓の河内村の村史の民俗編から、民話・伝説と故事を記した節を収めたものである。白山の千蛇ヶ池や富士山との背くらべ、高ボウケの大蛇、猿仏の名号、おひなの荒、天狗、菊酒、池の金山の伝説など、村と周辺に伝わる話を、白山関係の古文書や郡誌を引きながら記す。第三節「民話 伝説」、第四節「故事 伝説」、第五節「伝説」に分け、話ごとに題を立てて由来や現地のようすを添えている。