天井桟敷の声
どんな伝承か
平安末期、京の町は人口が急にふくれ上がり、露地裏に大工・左官・絵師・研師・井戸掘り人足・行商人らがひしめいて暮らしていた。話は京のはずれの分限者の家に移る。人を介して迎えた婿は、色白でやんごとなき風姿だが、なぜか顔を袖で覆って見せようとしない。同居を条件に婿とした、その晩の夜更け、天井からすさまじい物音と唸り声が降ってきた。「天の下の顔良しとは、おのれのことか」と鬼と覚しき声が響き、娘は三年前から自分のものだと婿を責めた。老夫婦の勧めで「顔をとのみ答えよ」と言うと、鬼は「さらば吸うぞ」と婿の顔を吸って七転八倒させたのち、「よし、娘はそちに取らせよう」と天井裏を踏み鳴らして立ち去ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本の妖怪(早川純夫・早川純夫・妖怪史・昭和)
早川純夫『日本の妖怪』。神話時代から江戸まで、日本の妖怪と妖異を歴史の流れに沿って描く。