厠の手と引き換えの狸伝膏
どんな伝承か
備前岡山のある士族の家では、女が厠に入ると下から毛深い手が出てきて尻をなでるという怪があった。恐ろしさに転居してもやはり同じことが起きる。そこで主人が意を決し、ある夜、尻をなでにかかった手を一刀のもとに斬り落とした。妖怪は手を残して逃げ、その手は老狸のものだったので、主人は大切に保管した。やがて狸が主人の夢枕に立ち、手を返してくれれば礼に秘薬を伝授すると懇願する。主人が返してやると、狸は膏薬の製法を教えて消えた。以後この家では、その薬を狸伝膏と称して売り出したという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
暮しの中の妖怪たち(岩井宏実・岩井宏実・民俗学・昭和(現代民俗学))
民俗学者・岩井宏実による妖怪事典『暮しの中の妖怪たち』。日本各地の妖怪を暮しの空間(山・海・道・家・屋敷)ごとに、約六十項目にわたり具体例とともに解説する。