天然の秘密・アイデンティティ
どんな伝承か
著者は熊嶽に続いて天然についても、〈生神〉と呼ばれた聖者性を問い直す。文献と生存関係者の証言から浮かぶ天然像は、家族を犠牲にしてまでの利他行、弟子を思う人情味、真理追求への激しい熱情、冷めた論理力を兼ね備えたものであった。光明皇后から中山みきへと続く、医療行為としてではない宗教性をともなう吮疽の仁が、男性である天然に相続されている点が特筆されるという。自著に〈大悪人〉〈罪の塊り〉と自己断罪する姿には、中世以来の一向宗の伝統と、廃仏毀釈で庇護を失いながら東本願寺を再建し清沢満之ら学僧を輩出させた民衆の底力が重なると著者は見る。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊術家の饗宴(井村宏次・井村宏次・霊術研究・現代(著述))
井村宏次『霊術家の饗宴』。明治末から昭和初期にかけて隆盛し、抹消された〈霊術家運動〉の歴史を発掘・復元する。プロローグで霊術家の運命を予告し、第一章では気合術師・浜口熊嶽が帝都に乗り込み九字と気合の嵐で名を上げ、明治の心霊手術を行い、実川上人のもと那智滝で仙人修行・三密の極意を得て、大阪の『真言秘密』裁判で判官臨席の気合術実験により勝利するまでを描く。