住職が夜半過ぎに起き出し
どんな伝承か
著者がかつて徳島県小松島町を訪れた際、その地に天狗寺があると聞いた。今より数十年前、その寺の住職が夜半すぎに起き出して、境内の一隅に立つ鐘楼の屋根の上に上っていた。家内の者が翌朝になって初めて気づき、大騒ぎして住職を屋根から下ろしたが、本人はどうやってそこへ上ったか全く覚えがなかった。この出来事から住職は天狗に連れ出されたと評判になったが、著者はこれを学理で考えれば睡遊の一種であろうという。鐘楼の屋根は梯子なしには上れないが、傍の樹木の枝を伝えば上れるので、夢中でその方法を取ったに相違ないとしている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
迷信の諸相・宗教の真相(井上円了・明治(妖怪学))
『妖怪博士』井上円了による『迷信の諸相・宗教の真相』。迷信を道理に背くことを誤って信じる心理と定義し、妖怪学の立場から全国を巡遊して各地の迷信を実地に報告・批判する(迷信打破)。