大洗の宿の臥床に残る散華の紙
どんな伝承か
桜井家の食客だった和田ます子は女学校を出て茨城の郷里へ帰り、少年の著者を連れて行った。亡き弟亀太郎の三周忌に盆燈籠を飾ると、翌朝その燈籠が著者の寝床の外へ運ばれる怪事があった。数日後、二人は縁談の相手方の人々と大洗の海岸へ出かけ、大きな旅館の三階に寝た。嵐の夜、ふと見ると掛け蒲団がまくれ、誰かがもぐり込んだように盛り上がっていたが、中は冷たく人の気配はない。臥床からは、寺がこしらえたあの燈籠の下に張られていた青い色紙の切れ端が出てきた。ます子は亀太郎の霊が来たと信じ、のちに霊からその縁談はよせと言われたと打ち明けた。
原典より
ぼくはてッきり亀太郎君の霊がきて一しょに寝たものに相違ないと思って、寝返りうつのもおッかなくて仕様がなかった。—— 霊界五十年(長田幹彦) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊界五十年(長田幹彦)
『霊界五十年』は、長田幹彦が自らの心霊体験を一人称でつづった随筆集である。霊媒亀井三郎の実験に立ち会った話に始まり、大正十四年に東京中央放送局で見た変死した技師の霊、自殺者の霊、神隠し、心霊写真、死者の霊との交わりなど、長年にわたって見聞きした出来事を語る。「亀井霊媒の実験」「放送局の幽霊」「霊界夜話」「幽霊のキスマーク」などの短い章を連ね、心霊研究の知人や医師との問答を多く交える。