浴衣姿で消える釜石の女の幽霊
どんな伝承か
著者は昭和二十一年四月に釜石の水産試験場へ着任し、宿舎がないので製造工場の片隅に缶詰の箱を積んだ寝台で暮らしていた。夜は町の同僚宅で麻雀をし、遅くに海沿いの三間道路を帰る。六月に入ったある晩、試験場近くのコンクリート堤に女がもたれていた。通り過ぎて振り向くと誰もいない。四日目の晩、同じ場所に浴衣姿の女がいた。東北の六月にしては薄着で、二十七、八の色白の細おもての美人である。人間だと確かめて横目で見ながら正面を横切ると、またもやふっと消えた。すぐ駆け寄って調べても何もおらず、著者は必ず捕まえてやろうと決心した。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
続 山だ原始人だ幽霊だ(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1972年(昭和47年))
『続 山だ原始人だ幽霊だ』は、西丸震哉の随筆集で、あとがきの日付は昭和四十七年三月十日である。出版の都合で前後編に分けたうちの後編にあたり、ニューギニアやニューブリテン島、トロブリアンド島の部族を訪ねた探訪記と原始社会の食生活論に続いて、幽霊についての自説と、自身や身内が出会った怪談を収める。終わりには手相、テレパシー、呪い殺し、雨やみの術、インドから自宅へ魂を飛ばす実験の話が並び、カバーと挿絵も著者が描いたとあとがきにある。