藁人形の釘を預かった弥勒院の院主
どんな伝承か
北玉造村の弥勒院で、院主が日暮れに本堂の灯を上げに行くと、白装束の者が堂の裏へ回るのが見えた。行ってみれば、村の在家の妻が杉の木に藁人形を当て、まさに釘を打とうとしている。訳を尋ねると、夫婦の縁が薄く連れ添うのがつらいのに、里の両親は婿も家筋も申し分ないと取り合ってくれない、夫が死ねば実家へ戻れると思い詰めたのだという。院主は、領主の耳に入ればお前の身が危ういと諭し、自分が代わりに祈り殺してやると言って釘と金槌を預かった。その夜からひそかに縁結びの祈祷を続けると、七日目に女は婚家に留まりたい気になったと告げに来たという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
霊の世界 ― 小品集(田中千代松・心霊研究・エッセイ・昭和)