最近の事です
どんな伝承か
広島県高田郡吉田町(現・安芸高田市)での話。語り手の娘、といっても四十になろうという一児の母から聞いた最近のことである。年輩の男が仏壇の前で一心に経を読んでいると、何となく後ろに気配がして振り向いた。すると白い着物を着た女が、襖から半身を見せて立っていた。男は一目でそれが死人であると察し、驚きながらも冷静を装って「貴方もここへ座ってお参りをしなさい」と自分の後ろを差して言うと、女は黙ってすっと姿を消したという。その夫婦はもと戦争中から女を集めて商売をしており、女たちにひどい仕打ちをして恨まれることもあっただろう、という話である。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和)
松谷みよ子『現代民話考 ― 死の知らせ・あの世へ行った話』を小話単位で全699話収録。死の知らせ・予兆、あの世(地獄・極楽)へ行った話、死者からのサイン、生まれかわりなど、生死とあの世にまつわる現代の民話を全国から採集し地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明606話・市区町村判明489話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。