客に凄まれた運転手の猛運転
どんな伝承か
三月下旬の深夜、百人町から池袋までという若い男を乗せた。派手な上着に坊主頭で、座席にふんぞり返って煙草をふかしている。明治通りは道路工事だらけでひどい渋滞だった。客を降ろした同僚の車を列に入れてやると、男は割り込みだと怒り、あんな運転手は死んでしまえ、自分は池袋で組の運転手をしているのだと毒づき、飛ばせと言う。同僚を悪く言われた運転手は急発進し、信号ごとに他の車を引き離して走り、池袋のびっくりガードの坂は無制動でわざと跳ねさせた。目的のマンション前へぴたりと着けると、男は恐れ入りましたと言って降りていった。
原典より
自分の所から二十里ほどの後藤野の話。—— 現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・民話・口承文芸・昭和〜平成)
松谷みよ子『現代民話考 ― 偽汽車』を小話単位で全525話収録。汽車・船・自動車などの乗り物にまつわる現代の民話・怪談を全国から採集。狐狸が汽車に化ける偽汽車、船幽霊、タクシーに乗る幽霊などを地域・話者つきで収録する。各話に採集地(都道府県・市区町村)と話者・回答者を可能な範囲で付す(県判明496話・市区町村判明359話、戦地や場所不明の話を含む)。原典は読者からの投稿・採訪に基づく現代民話の集成。