拷問に屈せず題目を唱えた鍋冠り日親
どんな伝承か
日蓮の高弟日進の弟子である日親は、京都に上って一条戻橋のたもとに立ち、他宗を激しく退ける辻説法を数年続けた。やがて幕府に再三建言し、立正安国論を著して将軍に献じたため、永享十二年二月六日に投獄された。一年半の獄中では、狭い牢に大勢の囚人と押し込められ、炎天下に薪の火で囲まれ、厳寒の夜には裸で冷水を浴びて氷の上に座らされ、焼けた鍬を脇に挟まされるなどの責めを受けたが、題目を唱え続けた。最後に焼いた大鍋を頭にかぶせられて顔が焼けただれても動じず、「鍋冠り日親」と呼ばれた。火傷のとき日親を念じると痛みが去るとも言われ、八十三歳まで生きたという。
原典より
或る時は夏の炎天に引き出して、広場の中に彼を坐せしめ、その周囲には薪を山と積んでこれに火を放ち、汝法華を棄て、念仏を信ぜよと、迫った、けれども、彼は下獄以来刹那にも南無妙法蓮華経の題目を高唱して止まなかつたのである。—— 心霊現象治病法(心霊学研究会・1940年(昭和15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
心霊現象治病法(心霊学研究会・1940年(昭和15年))
『心霊現象治病法』は、心霊学研究会が昭和十五年に発行した心霊療法の手引書である。精神を心理学と唯識の八識説で説き分け、暗示と感応、睡眠と覚醒、肉体と精神の存滅を論じたうえで、薬に頼らず観念と精神統一で病を治すことを唱え、大正十一年の治療の例などを挙げる。第四編「疾病と心霊療法」の後に附録の第五編「実験」を置いて霊動術・金剛力・剣の刃渡り・熱湯熱火を防ぐ法・感応術の修め方を説き、「発心の一言を残して」で結ぶ。