子供に見えぬ神様の行列の話
どんな伝承か
雪混じりの雨が続いたある日、車座になって呑んでいた者の一人が天空の一角を指さし、雲の切れ間を見て「神様がお通りぢや」と言った。皆も眼が痛くなるほど凝視するうちに、真白な着物だ、金の御冠が光っている、弓を持っておられる、白馬に乗っておられると口々に呻き、やがて主だった者に叱られて柏手を打ち、額を畳に擦りつけて拝んだ。中には何も見えぬ者もいたが、罪があるから見えぬのだと言われたくないので黙っていた。ただ五つ六つの小児だけが、何も見えないのにと怪訝そうに呟いたという。
原典より
雪混りの雨の日が續いた大空は、雲が絹縮を重ねたやうに擴がつてゐた。—— 阿波えゝぢやないか(山口吉一・民俗・幕末世相史・昭和(対象は幕末)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
阿波えゝぢやないか(山口吉一・民俗・幕末世相史・昭和(対象は幕末))
概観篇では御降り(御札降り)に関する騒擾、伊勢神宮への御蔭参り・抜参りを慶安・宝永・明和・文政・慶應と時代別にたどり、慶應のええじゃないか、阿波のええじゃないかへと展開。幕末阿波(徳島)の御札降り・群集乱舞・世直し的民衆運動を、各事例の冒頭に【日付】【場所】【人物】【状況】マーカー付きで網羅した民俗・世相史。