八幡女と名乗る見町のアリマサ婆
どんな伝承か
七戸の町から一里半ほど南の見町に、この地方でもっとも名高いアリマサと呼ばれる老婆が住んでいた。アリマサとは占者の意らしい。見町は七戸町の一部だが、実際は一農村にすぎない。婆の守本尊は、見町から三里西に聳える八幡岳の頂上に祀られた嶽八幡で、自ら「吾こそは八幡女だ」と名乗っていた。三十三の歳から八十余歳の今日まで五十幾年のあいだ、さまざまな不思議を現し、日清戦争も日露戦役も、明治三十三年の七戸町の大火も予言したという。土地の人々は不思議な婆さんとして敬うだけで、婆は幾人の病人を癒しても一厘の謝儀も受けなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
變態心理と犯罪(中村古峽)
『變態心理と犯罪』は、雑誌『變態心理』を主宰した中村古峽による変態心理学の論集である。二重人格・夢遊病・狐憑き・神隠し・催眠術を心理学の立場から解き、大本教・天理教・金光教の神懸りを妄想や人格変換として退け、霊能を称する火渡りや針刺しなどの実験の種を明かす。終わりには迷信や二重人格のからむ大正期の犯罪事件の実話を収め、著者自身の被験者や綾部の大本教訪問の見聞も例に引く。