漱石の臨死・浮遊体験
どんな伝承か
修善寺温泉で大吐血して危篤に陥った夏目漱石は、その後の精神状態を「思ひ出す事など」に書き残している。穏やかな心の隅がいつしか薄く曇り、そこを照らす意識の色が微かになり、ヴェイルに似た靄が軽く全面に広がって、総体の意識がどこも彼処も稀薄になった。それは普通の夢のように濃くはなく、尋常の自覚のように混雑してもいない。魂が身体を抜けるというのでは語弊があり、霊が細かい神経の末端まで行きわたって肉体の内部を軽く清くし、官能の実覚から遠ざけた状態だった。やがて心は宿る身体とともに布団から浮き上がり、元の位置に安らかに漂っていたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
あの世はあった―文豪たちは見た、ふるえた(三浦正雄・昭和50年代(1975年前後推定))
文豪たちの心霊体験(あの世はあった)/遠藤周作・三浦朱門の怪異/海外(フランス)での幽霊/怪音と怨念/あの世は存在するか