修善寺の大患で漱石が漂った縹渺
どんな伝承か
夏目漱石は四十三歳のとき、胃潰瘍の療養のため伊豆の修善寺温泉に滞在し、五百ccにおよぶ大吐血をして生死の境をさまよった。『思ひ出す事など』によれば、大吐血から五、六日たつころ、彼は毎日のように特別な精神の状態に入るようになり、やがてその訪れを前もって予期するまでになる。漱石はそれを縹渺という言葉で言い表し、霊が細かな神経の先まで行き渡って肉体を軽くするようだと記した。床の下に水が回って畳が浮くように、心も体も蒲団から浮き上がって漂っていたともいう。強烈ではないが、ドストエフスキーが語った歓喜に近いものだったと彼は考えた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
臨死体験(立花隆)(立花隆・臨死体験・ノンフィクション・平成)
トム・ソーヤーの変身・オメガプロジェクト・色を聴く(共感覚)・クンダリニー覚醒・時間なき世界・光の存在/光の世界・星への旅・体外離脱とは何か・脳と心の関係・シルヴィウス溝・死のリハーサルなど全章にわたり、臨死体験者の証言(弟の気持ちを知る・ベトナム帰還兵・登山家の奇跡)と、ムーディやケネス・リングらの研究、脳科学的解釈を縦横に検討。